更新:2007年3月12日
近年、放送のディジタル化に伴う字幕放送や手話放送などの情報保障が 充実しつつあります。一方で、個人や地域からの情報発信は ますます重要になっており、放送のあり方が大きく変わろうとしています。
本企画では、 まずNHK放送技術研究所の比留間伸行氏から、 「ディジタル放送と情報バリアフリー技術」のお話を伺います。 すでに各放送局は、放送番組への字幕付与の義務化への対応を進めていますが、 放送のディジタル化によって、 どのようなバリアフリー技術が実現されたのでしょうか? また、将来に向けてどのような技術が研究されているのでしょうか?
このイベント企画は「放送」をもっと広く捉えたいと思います。 特に近年、インターネットで動画や音声を伝えることが容易になり、 インターネットを使った放送が盛んに行われるようになってきました。
これらの情報メディアは、予算もスタッフも限られています。 大きな放送局のように情報保障を行うことが可能なのか? という不安があります。 その一方で、個人が簡単に情報を発信できるメディアは、 情報バリアフリーの分野にも新しい可能性をもたらすのではないでしょうか?
そこで、まずデジタルセンセーション株式会社の坂根裕様から 「インターネット配信番組における手頃な情報保障の提案」 について伺います。 また、株式会社ボイスバンクの木ノ川義英様から 「情報インフラとしてのポッドキャスティング」 というテーマで、 ビジネスと福祉の両面から音声メディアの可能性について 伺います。 また、ポッドキャストの作り手と受け手をつなぐ 「コミュニティ」の魅力についても語っていただけることでしょう。
地元・愛知県からも「コミュニティ」に関わりの深い パネリストをお招きしています。 開局して1年のコミュニティFM放送局 RADIO SAN-Q の神谷敬二様からは、 地域に密着したラジオ放送局が、どのような経緯で設立され、 どのような考え方で運営され、何を伝えようとしているのか、 といったお話を伺います。
株式会社NASAの川崎隆章様からは 「ラジオ放送支援システム『オラビー』の開発」と題して、 ラジオ放送の現状と展望、放送とコミュニティのつながり、 そして『オラビー』の開発によって何を目指すのか、 といったお話を伺います。
最後に総合討論を行います。
これらの議論を通じて、 字幕放送など放送メディアの情報保障の現状だけでなく、 インターネットの新しい技術が視覚障害や聴覚障害を持つ方々を どのように支援できるのか、 さらには福祉や防災など生活に欠かせない情報メディアとして、 テレビやラジオなどが果たすべき役割なども話し合っていきます。
このイベント企画の内容を音声で記録し、 インターネットラジオの番組として公開します。 (公開の許可が得られない場合は、その部分を除きます)
その目的は、今回のイベントを、 単に放送コンテンツのバリアフリー化について論じるだけではなく、 『放送のアクセシビリティ』と『講演会のアクセシビリティ』の諸要素を 対比させることで、具体的に検証する場とするためです。
福祉情報工学研究会(WIT)では学会発表における情報保証マニュアルを作成し、 視覚や聴覚に障害があっても聴講ができるように配慮を行ってきました。 今回のイベント企画においても情報保証を積極的に行う予定です。
しかし、情報保証は学会運営者だけの努力では実現できません。 発表者に対しては、例えば「視覚情報に依存しないようにお話ください」 といった配慮を促しても、なかなか徹底されません。
一方で、視覚に依存せずに情報を効果的に伝えるためのノウハウは、 ラジオ番組制作の現場で広く用いられています。 ラジオでは、一般の人々の発信する情報が、 わかりやすく加工されて日々の番組で伝えられているのです。
そこで今回、講演会をラジオ番組として放送することを参加者に意識していただき、 放送番組制作の視点から学会・講演会のデザインを行いたいと思います。 それによって、よりアクセシビリティを考慮した 学会・講演会が自然に行えることを期待しています。
具体的には、 本イベントにおいて「ラジオ番組として放送すること」を話し手に意識していただき、 講演の録音をインターネットラジオ(ポッドキャスト)配信し、 内容の分かりやすさを第三者に評価させる、といった実験を行いたいと思います。 ご協力をお願いします。